世の中に名作といわれる漫画があります。
それらの中には読み手の心を癒す力をもった作品があります。

もと漫画描きなら何でも読んでいたかというとそうでもなく、
私は純正少女漫画育ちなので、少年漫画は読めなかったことを先にお断りしておきます。
線がね、視覚的に受け付けないので、内容がよくても読めないものが多かったのです。
青年漫画やレディースは、私が描くのをやめる少し前くらいから
世に登場し、ジャンルが確立されたものなので、これもまたあんまり読んでいません。
その少ない範囲の中で、読後に世界観が変わった作品が幾つかあります。

写真の「トーマの心臓」は、実は世に発表されたかなり後から読んでいます。
少年愛がテーマということでとりざたされていましたが、
私はこの作品をそんなところで捉えることは出来ませんでした。
当時人間不信の真っ只中にいた私は、
「こんなに深く誰かを愛することが出来るだろうか?」と、大泣きしました。
そして、人間と関わることに目を向け始めたのです。

「訪問者」は、前出の作品に出てくるある人物の幼少期の話になっていますが、
独立して読むことが可能です。
親との葛藤を抱え続けていた私が、
「子が親を許すこともある。」のだと、いう新しい視点を持つ助けになったものです。
萩尾さんには、「イグアナの娘」や「半神」など他にも数多くの作品があり、
これらにも私は泣かされています。

世の中に多くの描き手がいて、当然多くの作品が生み出されてきましたが、
感動するものなら沢山の名前が挙げられます。
しかし、
人生に影響を与えたほどの作品は、そう多くはありません。
これらの作品に出会えたから現在の私がここにいると思うものです。