雑誌の書評を読んで興味を持ったのは、1年前。
その場で検索して予約したにも拘らず待つこと半年、しかもやっと順番がまわってきたのに
私のミスで図書館に借りに行けず再び予約して半年待ってようやく手にすることが出来ました。
本を開いて専門書ではなく小説であることに気づき、がっかりしたのですが、
まさか読んでこんなに泣かされるとは予想もしていませんでした。

インターセックス」ここには2元論の歪みが医療という現場に
どのように現れているのかが、生々しく書かれていました。

インターセックスとは、中間性の身体で生まれてきた人の性を言います。
男であり女である者、または女でもなければ男でもない者、
日本語の半陰陽(はにわり又はふたなりともいう)のことです。
この言葉があるくらい昔から存在していたことが伺えます。


この小説では主題は「性」というジェンダーの問題ですが、
ここには出産という「生命」の問題も絡んできますし、
遺伝子異常という治らない患者と医療がどのように向き合っていくべきなのかの
問題提起も物語を通じてされています。
インターセックスという身体に生まれた者が、
研修医を含め珍しい病態として扱われることに対する
医療現場で感じる怒りや哀しみ恥辱は、
自分の体験にも通じるものがあります。
そして、家族の態度もほぼ同じです。
唯一違うのは、早くに両親を失った私の両親は、
私が他と違うことで責められはしなかったであろうことくらいです。

これを読んでいくと「正常でない」という決め付けの元に
医療行為が進められていくことが理解されます。
しかし、それは真実なのでしょうか。
不便は解消されるべきと思いますが、
インターセックスに生まれた者達は、病気ではないのです。

「医学というのは人々の救済の歴史であった一方で、
人々を正常と異常に分けて、片方を一方的に患者に仕立て上げるという
残虐の歴史も持っています。」(文章は引用)

偶然にもここにまたしても、2元性社会の犯す間違いを
見ることになりました。
私がこの本を読むのに1年待たされたのは、偶然ではなかったのでしょう。